多焦点眼内レンズ

白内障と多焦点眼内レンズ

白内障と多焦点眼内レンズ白内障の手術で目の中に挿入される人工の眼内レンズは、単焦点と多焦点の2種類に大きく分けられます。
単焦点眼内レンズが遠くと近くのどちらか一方にだけ焦点が合うよう作られたレンズであるのに対して、遠くと近くのどちらにも焦点が合うよう作られた高機能のレンズが多焦点眼内レンズです。

多焦点眼内レンズとは

多焦点眼内レンズは複数の距離に焦点が合うよう開発された高機能のレンズです。多焦点眼内レンズによって遠くと近くのどちらにも焦点の合う視力を手に入れられる他、同時に近視や乱視、老眼なども矯正できるので、手術後は8~9割の方が眼鏡に頼ることのない生活を実現しているとされています。
ただし、多焦点眼内レンズにも配慮を必要とするデメリットがいくつか存在します。眼内レンズはいったん目の中に固定すれば半永久的に使用可能で、洗浄などのメンテナンスも必要としませんが、固定後は別のレンズに入れ換えたりすることが決して簡単ではなくなります。そのため、多焦点眼内レンズをご希望の際には、事前に特性や単焦点眼内レンズとの違いをしっかりと理解し、ご自分の生活様式やお仕事なども考慮に入れながら、慎重に検討した上で選択することが大切です。

多焦点眼内レンズをおすすめしたい方

多焦点眼内レンズは、手元を見ようとするたびに老眼鏡をかけるのが面倒な方、眼鏡をかけずに思いきりスポーツを楽しみたい方など、眼鏡のわずらわしさから解放されたい方に特におすすめできるレンズです。
実際に多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を受けた方へのアンケートでも、8~9割の方が眼鏡に頼ることのない生活を実現しているとの結果が出ています。

多焦点眼内レンズの特性

多焦点眼内レンズには遠くと近くのどちらにも焦点が合うというメリットがある一方で、その特性上配慮を必要とするデメリットもいくつか存在します。
まず、個人差はありますが、見え方に慣れるまでに数週間~数ヶ月程度を要する場合があります。また、夕方などの薄暗い状態では見え方がぼんやりしたり、夜間などの暗い状態では光が乱反射して見えたりまぶしく感じたりすることもあります。そのため、例えば街灯や車のライトなどの光源が多い夜間に車の運転をする機会の多い方にはあまり向いていません。
また、単焦点眼内レンズに比べて眼鏡に頼る場面は格段に少なくなり、実際に眼鏡を全く必要としなくなる方も少なくはないものの、眼鏡に頼った方が見えやすくなる場面が全くなくなるわけではありません。例えば手元で細かい作業をしたり、細かい文字を読んだり、さらには長時間パソコンに向かったりする際など、ある程度限られた場面では眼鏡をかけた方が楽に見えることもあります。

多焦点眼内レンズの種類

多焦点を実現するためのレンズ構造には大きく分けて回折型と屈折型の2種類があり、それぞれに以下のような特徴を有しています。

回折型

レンズの表面に刻まれた階段状の細かい溝が距離に応じて光を振り分けることで、遠近それぞれの焦点を合わせるレンズです。屈折型と異なり瞳孔の大きさには依存せず、物体に当たった光がその物体の影となる部分に回り込む回折現象に基づいて光を分配するので、遠近どちらも見えやすいのが特徴です。

屈折型

屈折力の異なる部分を交互に組み合わせた構造のレンズが距離に応じて光を振り分けることで、遠近それぞれの焦点を合わせるレンズです。遠くの見え方に優れている他、中間距離も比較的見えやすいのが特徴です。ただし、光の分配が瞳孔の大きさに依存しているので、ご高齢の方には不向きとされています。

多焦点眼内レンズの主な製品と特徴

多焦点眼内レンズとして様々な特徴を持つ製品が開発されていますが、中には先進医療の対象とはなっていないものもあります。

テクニスマルチフォーカル(Tecnis Multifocal)

遠くと近くの2ヶ所に焦点の合う回折型レンズです。近くの焦点距離を33cm、42cm、50cmの中から選べますが、乱視の矯正には対応していません。先進医療の対象です。

テクニスシンフォニー(Tecnis Symfony)

焦点距離の幅を拡張した新しいタイプの回折型レンズです。近くには焦点が合いにくいものの、中間から遠くまでの広範囲にわたって等しく自然な見え方を実現できるとされています。先進医療の対象です。

レストア(ReSTOR)

遠くと近くの2ヶ所に焦点の合う回折型レンズです。近くの焦点距離を30cm、40cm、50cmの中から選べますが、乱視の矯正に対応しているのは40cmのタイプのみとなります。先進医療の対象です。

ファインビジョン(FineVision)

遠く、中間、近くの3ヶ所に焦点の合う回折型レンズです。近くの焦点距離として40cm、65cmのどちらかが選べます。先進医療の対象ではないので、選択すると手術も自由診療となります。

レンティス(Lentis)

従来の屈折型が持つ欠点を解消した分節状屈折型レンズです。焦点数は遠くと近くの2ヶ所ですが、オーダーメイド方式で作られるため、他にはない矯正精度の高さに伴う鮮明な見え方を実現できるとされています。先進医療の対象ではないので、選択すると手術も自由診療となります。

多焦点眼内レンズを用いた白内障手術に関する主な注意点

費用について

手術にかかる各種料金について、詳しくは事前に当院までお問い合わせください。

先進医療特約について

民間の保険会社で先進医療特約に加入している場合、手術費用の給付を受けられることがあります。詳しくは事前にご加入の保険会社までお問い合わせください。

レンズの適性について

手術中、眼内レンズの土台となる水晶体の袋状の組織に強度不足が判明した場合、多焦点眼内レンズの固定が叶わないことがあります。その際には単焦点眼内レンズに切り換えて手術を続行させていただき、手術費用にも保険診療が適用されます。

見え方の慣れについて

手術後、多焦点眼内レンズでの見え方に慣れるまでにはある程度の時間が必要となります。個人差はありますが、具体的には数週間~数ヶ月程度でよく見えるようになる方が多いとされています。

見え方の特性について

焦点が複数ある特性上、多焦点眼内レンズでは外から光を採り入れる際に若干の取りこぼしが発生します。そのため、単焦点眼内レンズに比べてコントラスト感度がやや低く、光の量が少ない夕方などには見え方がぼんやりするようなことがあります。
また、夜間などには街灯や車のライトといった光源が乱反射して見えたりまぶしく感じたりするグレア現象やハロー現象が発生する傾向もあります。

眼鏡の必要性について

手術後、多焦点眼内レンズは単焦点眼内レンズに比べて眼鏡に頼る場面が格段に少なくなり、実際に眼鏡を全く必要としなくなる方も全体の8~9割におよぶものの、眼鏡に頼った方が見えやすくなる場面が全くなくなるわけではありません。例えば、辞書のような細かい文字を読む際などには眼鏡をかけた方が楽に見えることもあります。

タッチアップ手術について

手術で目の中に挿入する眼内レンズの度数は、手術前に行われる各種検査の結果や過去の白内障手術に基づいて標準化されたデータとの比較などから導き出される予測によって決定されます。しかし、こうした予測を実際の度数と厳密に一致させることは非常に難しく、手術後には一定の割合で不可抗力的な度数のずれが生じてしまうことがあります。もちろんそのずれは日常生活に支障をきたさない程度のごく小さなずれである場合がほとんどなのですが、その方の目の状態が過去のデータなどとの比較で著しく異なるようなケースでは、ずれが比較的大きく現れてしまうこともあります。
こうして手術後に度数の大きなずれが生じた方や、ずれは小さいものの見え方に納得がいかないという方につきましては、ご希望があれば追加で近視や遠視、乱視などを矯正するタッチアップ手術を検討いたします。

レンズの入れ換えについて

手術が度数のずれもなく成功し、手術後の目の状態にいささかの問題も発生していない状態で、それでも手術後の見え方に事前のご期待とは著しい乖離があるとしてご納得いただけないような場合には、強いご希望があれば手術による眼内レンズの入れ換えを検討させていただくこともあります。
ただし、この手術はレンズの土台となる水晶体の袋状の組織に大きな負担をかけ、それにより無用な損傷を招いたり、手術後に緑内障や網膜剥離といった深刻な合併症が発生するリスクを高めたりすることがあります。また、この手術は通常の白内障手術とは異なり、費用の全額が自己負担となる自由診療扱いともなります。
なお、これまでのところ、当院ではこうした手術を希望された患者様は幸いにもいらっしゃいません。

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